当教室の呼吸器班は、日本小児呼吸器学会の創設以来、常に学会運営の中核を担ってきた歴史と伝統があります。初代の班長であった吉田豊先生とOBの故安田正先生はそれぞれ学会長と運営委員長を務められ、2代目班長の高瀬も2006年に学会長を務め、2015年からは運営委員長として学会の舵取りを担っています。小児呼吸器の専門医制度はありませんが、臨床研究で学位を取得するよう指導していきます。小児期最大の慢性疾患である気管支喘息、一般外来患者で最多を占める呼吸器感染症を深く掘り下げて勉強できるので、開業にもメリットがあります。OBを含めた月例の抄読会を開催しています。

現在の主な研究

  1. 小児呼吸音の音響学的解析とその臨床応用―聴診記録の電子化と指標化
  2. 日本人小児の肺機能検査基準値の設定
  3. 肺傷害や気道炎症のマーカーに関する研究
  4. 小児の慢性咳嗽の疫学的研究
  5. 小児の閉塞性睡眠時無呼吸に関する研究
  6. 重症心身障害児の呼吸管理に関する研究
  7. 気管支鏡による気道疾患の評価

代表的研究成果

各研究班の数多くの研究発表の中から、代表的なものを解説付きで掲載しています。

  1. 工藤翔二、村田朗、高瀬真人、長坂行雄、清川浩、中野博:聴いて見て考える肺の聴診.アトムス、東京、2014.
    わが国の肺音研究会の中心メンバーが製作した初めての肺聴診教育用DVDブック。聴診ビデオにサウンドスペクトログラム表示を組み合わせて聴覚的、視覚的に学べるようにした肺聴診のテキストブック。
  2. 日本小児呼吸器学会作成:小児の咳嗽診療ガイドライン.診断と治療社、東京、2014.
    小児の咳嗽診療の指針を提供するため、学会主導によるわが国初の客観性のあるガイドラインとして作成された。高瀬がガイドライン委員として分担執筆している。
  3. Takase M, Sakata H, Shikada M, Tatara K, Fukushima T, Miyakawa T: Development of reference equations for spirometry in Japanese children aged 6-18 years. Pediatr Pulmonol. 2013; 48(1): 35-44. 高瀬が日本小児呼吸器学会の肺機能委員会委員長として全国から集積した最新のデータに基づいて日本人小児のスパイロメトリー検査の各種指標の基準値を設定し、国際比較を行った。
  4. Nishida S, Fukazawa R, Imai T, Takeda S, Hayakawa J, Takeuchi H, Shimizu K, Kawakami Y, Takase M.: Serum KL-6 and surfactant protein-D in children with 2009 pandemic H1N1 influenza infection. Pediatr Int. 2011; 53: 910-914.
    2009年の新型インフルエンザパンデミック時に呼吸障害で入院した小児例で肺傷害のマーカーであるKL-6やSP-Dの血中濃度を測定したが軽微な上昇が大部分であった。
  5. Imai T, Takase M, Takeda S, Kougo T: Serum KL-6 levels in pediatric patients: reference values for children and levels in pneumonia, asthma, and measles patients. Pediatr Pulmonol 2002; 33: 135-141.
    間質性肺炎など肺胞傷害のマーカーとして日本で開発された血清KL-6値について、日呼吸器疾患児のデータから小児の基準範囲を設定し、有用性について報告した。